感染症:子供と犬が一緒に仲良く暮らせる為に調べた事③

毎日の歯ブラシ

感染症に関して

動物達が既に生活している我が家に生まれてくる子供。感染症やアレルギー発症のリスクと対策の為、沢山の論文を調べました。

論文や獣医師監修のコラム等を読む限り、飼い犬に適切な予防接種が行われている事や健康診断などの基本的な健康管理がなされている事を前提に、衛生的に共同生活を送っていれば過度な心配はいらないと感じました。

この「衛生的」とは、ペットの衛生管理はもちろん、生活環境を清潔に保つ事の他、犬と人との距離間の事を示しているようです。

例えば、犬に人の口を舐めさせる事は推奨されないという事はよく述べられています。これについて衛生面から推奨されない事は想像の範囲内ですが、今回改めてその根拠を調べたので紹介します。

ヒトとイヌの常在菌について

人の口腔内細菌は非常に多く、密度で比較すると腸内細菌と同程度。歯垢は便と同等の菌数が観察されるそうです。歯磨きを十分されていても 1000億以上、あまり磨かない方は 4000億以上の細菌が付着しているという事です。なぜ、そもそも多数の菌が常在している部位である人の口腔内に、犬の口腔内細菌が付着する事が問題になりうるのか。それは、人と犬では常在する菌種の多くが異るからだそうです。

人の口腔内が弱酸性であるのに対し, 犬の口腔内 (唾液) のpHはアルカリ性であること、また食生活の違いなどから常在する細菌の種類は違うといわれています。本来人の口腔内には常在していない犬由来の菌が人の口腔粘膜を経由し体内に侵入することで、それらの菌が病原性を発揮し、感染症を発症する可能性があるという事です。

具体的には、犬の粘膜や唾液が人の粘膜と触れるほどの濃厚な接触。口を舐められたり、口移しで食べ物を与えたりといった行為は 人間には本来ない細菌が粘膜に付着してしまう為、感染症に発展してしまう可能性が増加するそうです。

実際に犬の唾液内に含まれる細菌のうち、問題になる頻度の高い菌を知るため、参考として、咬傷事故時に菌を同定した論文を読みました。

感染の原因菌は?

犬の咬傷から検出された細菌として多かったのは、パスツレラ、連鎖球菌、ブドウ球菌が多く、その他、コリネバクテリウム、Eikenella corrodens 、カプノサイトファーガ-カニモルサスの報告もありました。
Talan, D. A., Citron, D. M., Abrahamian, F. M., Moran, G. J., & Goldstein, E. J. (1999). Bacteriologic Analysis of Infected Dog and Cat Bites.
New England Journal of Medicine, 340(2), 85-92. doi:10.1056/nejm199901143400202【C-1】
このうち、近年増加傾向であり、注目されている細菌がパラツエラです。

パラツエラ菌 の保菌率は猫がほぼ100%,犬では15~75% と高率で,他の咬傷・掻傷の原因菌と比べると検出される割合が高く,ペットが原因となる感染症で最も注意すべき原因菌であるそうです。
大橋久美子、滝川久美子、荒井ひろみ、小栗豊子
Pasteurella multocida の分離状況と患者背景 ―最近9 年間の成績―
日本臨床微生物学雑誌Vol. 26 No. 2 2016. 【C-2】
犬に顔を舐められないように気をつけていれば安心かというと、それだけでは完全に防ぐことはできないそうです。

直接的な接触ではなくとも、間接的に感染することもあるそうです。犬の唾液は、犬の毛、床、ソファーなど、どこへでも付着します。しかも一度唾液が付着すると唾液内の細菌は数時間経っても検出するそうです。

それらに付着した菌が間接的に人間の口に入ってしまうことは当然起こりえます。

また、日常生活の中で、小さな傷が出来ることはよくあります。この傷は皮膚バリアが破綻してしまっていますが、その小さな傷に唾液が付着する事だって起こりえます。

犬を飼育している以上、人間の体に完全に菌が付着しないようにする事は不可能だと思います。とはいえ、経路が直接的であろうと間接的であろうと、これらの病原菌が人の皮膚や粘膜に付着しても、本来は一過性に付着するだけで定着はしにくいそうです。

病原菌が体内に侵入し、感染症として病気を発症するには、病原菌(犬由来)の感染力と、宿主(人間側)の感受性の相互関係において前者が優位に立った場合です。

だから、普通は感染症を引き起こすまでは至らないそうです。

犬を室内飼育している家庭のうち、犬の唾液が手指や家具について、即座に手洗いや消毒を徹底している家庭がいったいどれくらいを占めるのでしょうか?決して大多数ではないと思いますが、もしも犬を室内飼育されている家庭を中心に犬由来の感染症が頻発しているのであれば、既に社会問題になっているはず。

そうならないのは、適切に健康管理されている飼い犬が保有する常在菌は、日和見感染症が多く、健常人であればそれらの細菌は定着し増殖しないからでしょう。

しかし、免疫力が低下している場合は、特に注意が必要だと考えられます。つまり、子供や高齢者、基礎疾患がある方が同居している場合です。

近年有名になったニュースや記事をあげると、例えば、

 “ペットの犬や猫の口腔内細菌『カプノサイトファーガ・カニモルサス』が人に感染し、2002年以降6人死者(50歳~90歳代)が出た”【C-3】

これは厚生労働省ホームページで詳しい情報を見ることができます。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/capnocytophaga.html

ペットや家畜に感染率の高いヘリコバクター・ハイルマニイがヒトに感染すると胃がん発症のリスクが上がるといった、感染症以外の疾患に罹患するリスクも確認されたそうです。

ニュースや論文のとらえ方

こういった話題は大きく取り上げられるので、タイトルと要点だけ読むと誤解してしまいがちですが、詳しく見た結果、私は過度な心配はせず、これまでと同じ様に生活しています。

1つめのニュース【C-3】を厚労省ホームページで詳細確認すると、
・主にイヌやネコなどによる咬傷・掻傷から感染する
・犬の咬傷事故については、保健所に報告されたものだけでも年間約6千件もあり、報告に至らないものを含めるとさらに多く発生していると考えられているが、報告されている患者数は非常に少ないことから、あくまでも免疫の低下した方に重症化しやすい傾向はあるものの、本病は極めて稀にしか発症しないと考えられる と、明記されています。

2つめの記事【C-4】は、
・現段階ではあくまでも推測であり、 感染経路は特定出来ていない。
・ハイルマニイ感染者のうち、ペットを飼っていたのは2割程度であり、ペットが原因になりうると断定するには有意ではない。
・そもそも、ペット飼育者の何%にこれらの病原菌が感染するのか と、いう疑問が生じます。

よって、我が家では、「犬の常在菌=ハイリスク」と心配するのではなく、重症の感染症にまで発展する事もあるので決して軽視してはいけないと捉え、家族各々の年齢や健康状態に応じて犬との距離感を保つようにしています。

そして普段から、こういう事例に関しては積極的にアンテナを張り、気になるニュースを耳にした時には、専門家や専門機関からの信頼性の高い情報を確認し勉強するようにしています。

ペット飼育は将来の感染症リスクを減らす?

一方、ペット飼育者にとって、うれしい報告もありました。 感染症発症のリスクを与えるどころか、将来の感染症発症頻度を減らすという研究です。

フィンランド・クオピオ大学病院のEijaBergroth氏らの研究で、生後1歳までに犬との接触があった幼児は、接触のなかった幼児に比べ、上気道感染症(風邪)や中耳炎になるリスクが低下したと発表しています。
Eija Bergroth, et al.
Respiratory Tract Illnesses During the First Year of Life: Effect of Dog and Cat Contacts. (2012).
PEDIATRICS, 130(2), X4-X4. doi:10.1542/peds.2011-2825d【C-5】
これらの論文や記事を読んでからも、私達はこれまで通り、室内飼育の共同生活を継続しています。

我が家の対策

上記の犬に人の口周りを舐めさせる事は、犬にとっての大切な愛情表現の一つ。だから、我が家では基本的には許容しています。

それでも、妊娠中の時、睡眠不足が続いている時、体調不良の時など“免疫力低下”している可能性のある時は感染症に発展するリスクがある事は忘れないようにし、接し方を変えています。

また、子供や高齢者は成人に比し免疫機構が十分でない為、犬に口周りを舐めさせる事は禁止していますし、触れ合いの時間を取った後は、必ず手洗いを行っています。

息子は今現在2歳、祖父母は90歳。年齢相応に元気で健康です。

息子のこと

息子は生後6週から保育園に通い出しましたが、たとえ保育園内で風邪が流行っていても、風邪を引く事は全くありませんでした。しかし、生後7か月に入った頃、突然高熱を出し、ほぼ毎日鼻水と咳を出すようになりました。

この時、母親からの免疫が半年程続くから感染症になりにくいが、生後6ヶ月を過ぎたころからすぐに風邪などの感染症にかかりやすくなる、という話が本当だったと実感し、同時に犬が子供の口周りや湿疹部、切傷部など、皮膚バリア機能が低下している箇所へ接触しないように注意し、また触れ合い後の手洗いを徹底するようにしました。

むしろ、この頃から行動範囲が広がり、犬と遊ぼうと自ら向かって行く様になりましたが、必ず目の届く範囲で触れ合いを行っています。

祖母のこと

祖母に対しても同じです。

大変可愛がってくれますが、常に触れ合える状況にするのではなく、触れ合いのon-off を作り、私達飼主の目が届く範囲で遊んでもらい、その時間が終わったら手洗いをするようにお願いしています。

犬のこと

一方、犬への対策も欠かさず行っています。定期的なトリミングは勿論ですが、それ以上に口腔内常在菌を減らす目的として愛犬への口腔内ケアに重点を置いています。

問題となりうる常在菌を無くす事は出来なくても、歯磨きでプラークを除去し、菌の繁殖を抑え、細菌数を低減することが出来れば、結果的に人間へ付着しうる菌量を低減出来るからです。
歯磨き実施前後に、歯牙の菌数を確認し、その効果を検討した論文がありました。
渡辺隆之、門野紗英里、山崎 美香、高橋寿恵、桜井富士朗
イヌの口腔内衛生維持のための効果的な歯磨き方法の研究
帝京科学大学紀要 Vol.8(2012)pp.113-119【C-6】
犬の歯牙に付着常在化している人畜共通感染症の一つカプノサイトファーガ-カニモルサスが、歯磨き前後で減菌効果を示した研究です。

この研究の中では、複数の歯磨き方法(歯ブラシ、デンタルガムなど)を実施し、減菌効果を比較検討しています。また、この論文では、犬の歯磨きは、犬の口腔内衛生の維持だけでなく、私達人間への感染を意識した公衆衛生において重要である事が考察されています。

我が家でも、この研究で最も効果を示した、“直接歯磨き法”(歯ブラシ)を毎日継続的に行っています。

最初は我慢前回の歯磨き時間でしたが、今では愛犬との二人だけの大切な時間になっています(^o^)
穏やかなこの表情が大好きです
★動画はこちらです↓★

ジオの歯磨き

動物と共同生活している私達ですが、小児・高齢者ともに今のところ犬由来の感染症は起きていないのは、歯磨き含めた衛生面に注意しているおかげかもしれません。

しかしながら、動物達と一緒に生活していると、自然と“汚れ”や“ニオイ”に対する感覚が鈍くなってしまうのも事実です。その時は我が家に遊びに来てくれる友人や親戚が率直な意見が私を初心に戻してくれる貴重な機会になっています。

追記:歯磨きが愛犬と飼主の双方にとって重要である事を記した上記内容に関して、ご関心を持って下さり、個別にご質問を下さった方が複数名いらっしゃいましたので、そのご質問内容を中心に“歯磨き”について次回のブログで追記します。

次回は、歯磨き(D)について追記します。次々回はアレルギー(E)に関してです。

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下記URLは、彼等 U。・x・)ノワンコの成長をテーマにしたホームビデオです。
その他、我が家のインコ(フ・θ・)フも動画にして定期的にアップしています。
お時間ある時にご覧下さい。
ご意見やアドバイスをお待ちしております。
         yohei sonoo
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